Boiardo Hotel / 1495

Boiardo Hotel / 1495

イタリアで最も名高いセラミック生産地帯という戦略的な場所にあるため、業界の展示会、企業イベント、新規プロジェクトの立ち上げ、商品の発注など、さまざまな目的でこの地を訪れるビジネスマンたちがこのホテルを利用します。さらに、ハム、バルサミコ酢、パルメザンチーズなどDOCやIGPの呼称をもつ食品の生産地としても有名地域なので、これらの製品に引き寄せられる宿泊客もいます。ワインの産地としても有名で、アペニン山脈に近いなだらかな丘陵の斜面に規則正しい直線を描く美しいブドウ畑の景色が広がります。このようなロケーションにあるBoiardo Hotel/Ristorante 1495は、現代的で国際的なイメージのビジネスマンにぴったりの宿泊施設として成功を収めており、数々のディテールを通じてその雰囲気を作り出しています。結果的には、ビジネスライクで快活な緊張感に当地に本質的に結びつく歴史や特異性を感じさせる親密なムードを加味するという一種高尚なアイディアが複雑巧妙にバランス良く統合されています。こういった意味では、デザイナーのSimone Cagnazzoの構想は単に地元出身の15世紀の詩人で『恋するオルランド』の作者であるボイアルドに因んだというだけでなく、この詩が編まれた色彩的環境にインスピレーションを得て、それを現代的なインテリアのクリーンなラインに合うようにアレンジするというものです。ロビーに置かれた張り込み家具、プランター、収納家具、ベッドのヘッドボードの色調として選ばれたモカブラウンと赤みがかったトーンは、ボイアルドがその作品の中で語った15世紀の屋敷内の特徴を成す色と同じです。こういった色を黒やオフホワイト系のカラーと合わせ、ぬくもりのある照明でアクセントを付けた柔らかな雰囲気を醸し出しています。「ボイアルドホテルとレストラン1495のインテリアデザインの仕事は、3年の歳月をかけて仕上げましたが、複雑で強い地域性との繋がりと建築的な持続可能性という2つの基本的な視点を合わせたものです。共有スペースへの特別な配慮がみられるのは、ホテルの広々としたロビーとレストラン1495のラウンジエリアのインテリアです。仕事をしたり旅をしたりする人々が宴のために出会う場所であり、DeCastelliが制作したカスタマイズ仕様のブックシェルフ「Existence」が2台置かれています。ボイアルドホテルでの経験は、伝統とテクノロジーと持続可能性を融合することをねらいとしたものです。これらのコンセプトが混ざり合い一体化したプロジェクトのおかげで、総体としてそれを感じ取ってもらうことができ、Boiardo Hotel / 1495を特徴づける付加価値をつくっています。

建築家 Simone Cagnazzo
場所 スカンディアーノ(イタリア、レッジョエミリア)
2014
写真提供 Davide Bartolai